健康食・バナナのすすめ


バナナのイラスト

 

 

バナナのイラスト 健康食・バナナのすすめ

 

 ちょうどTV番組でも取り上げられていた内容もまとめて参考にしつつ、現代栄養学的な面はもちろん鍼灸師の立場から東洋医学的(本草学的)な面も含めて健康長寿につながるバナナについて紹介したいと思います。

 


健康長寿者がよく食べる果物のひとつであるバナナ

 

バナナのイラスト 健康長寿者が朝食でよく食べる果物
 ・1位 バナナ
 ・2位 りんご
 ・3位 みかん

 

 


高血圧&血糖値対策になる血管をふけさせない2大パワー


①血管をふけさせないバナナパワー

 

 高血圧対策:バナナに豊富なカリウムは脳卒中のリスクを低下させる。カリウムは高血圧を抑え、結果的に脳卒中のリスク低下につながります。

 

 


ナナは果物の中でもカリウムがとても豊富

 

カリウムが多い果実ランキング


1位 アボカド
2位 ドリアン
3位 バナナ
4位 ドラゴンフルーツ、メロン

 

 簡単に皮を剥いて食べることができるバナナは最も手軽にカリウムがとれる果実と言えます。高血圧になる主な原因は塩分過多にありますが、カリウムは尿から余分な塩分を排出してくれるので高血圧の予防になります。

 

 

バナナを朝食で摂ると高血圧対策になる理由は?

 

 朝は心臓の動きを活発にする交感神経が働きだす時間帯になります。朝は1日の中で最も血圧が上がりやすい時なのです。なので血圧が上がりやすい朝にバナナはオススメ!

 

 

バナナの食べ分け術

 

乾燥バナナ:乾燥して水分が抜けてカリウムが凝縮されている。血管をふけさせないカリウムを効率よく摂取しやすいのがメリット。
冷凍バナナ:バナナを冷凍すると脳の血管などの炎症を抑える抗酸化物質ポリフェノールがUP。カリウムの量は変わりません。【冷凍すると抗酸化物質ポリフェノールが非常に上がるという研究もあります。】
加熱バナナ(ホットバナナ):バナナを加熱すると腸内環境を整えるオリゴ糖がUP。ただし加熱するとビタミンが少し減ります。
のバナナ:ビタミンを全く損なわずに食べることができる。
 どのような食べ方でもよく、とりたい栄養によって食べ方を変えるのがポイントになります。


②脳をふけさせないバナナパワー

 

変色するバナナ

 

 

 


黒バナナになると血糖値の上昇がより緩やかになる

 

 バナナの中には3つの種類の糖(ブドウ糖・果糖・ショ糖)がある。
・果糖:血糖値にあまり影響しない。果糖は構造が複雑で食べた後にすぐに血液にいかない。
・ショ糖:食べた後に急激に血糖値を上げる。ショ糖は砂糖の主成分。
 ▼血糖値対策: 黄色いバナナから黒バナナになるとショ糖が減って果糖が増えます。つまり食後に急激に血糖値が上がらず、あまり血糖値が上がらない果糖が増えます。

 

 

バナナは黒くなると酵素の量が大幅にUP

 

 人の体の中には何千種類もの酵素があります。例えば、がん細胞がつくりだす(転移する原因になる)新生血管の働きを抑える酵素や脳の記憶に関わる神経細胞で働く酵素など健康長寿には欠かせないものです。ただし40歳を超えると体内でつくられる酵素の量が減っていきます。だからこそ食べ物から酵素をしっかり取り入れることが大切になります。

 


バナナの酵素の量は皮に現れる黒い斑点の量と比例

 

・黒い斑点=シュガースポット
 シュガースポットが増えると酵素もUPします。

 


脳を老けさせないトリプトファン

 

 バナナのトリプトファンは脳内のセロトニンというホルモンを増やし、寿命を延ばすと言われている。セロトニンの材料になるのがトリプトファン


セロトニン:幸せホルモンと呼ばれ、脳にリラックス効果をもたらす。
トリプトファン:体内では作ることができない。食品から摂る必要がある。

 

 科学雑誌『Science』「幸せな人は長生きする」と題した記事が2011年に発表されました。幸せを感じている人はそうでない人より7.5年~10年も寿命が長いという結果が出たようです。

 

 トリプトファンは大豆食品・乳製品・穀類などにも含まれています。しかし、ただトリプトファンを摂れば良いというわけではないのです。

 


セロトニンを作るのに必要な栄養素

 

・トリプトファン
・ビタミンB6
・炭水化物

 

 バナナは以上の3つの栄養素をすべて含んでいるため幸せホルモン・セロトニンを作るのに最適だと言えます。

 

★注意事項★

腎臓の機能が低下している人は尿でカリウムを排泄することができないのでバナナの摂取は注意が必要です。

 

 

 
東洋医学的バナナ論


 明代の本草書で李時珍の著作『本草綱目』巻十五にはバナナ(甘蕉)のことが解説されています。

 

 『本草綱目』巻十五・甘蕉(国立中國醫藥研究所出版)

●『本草綱目』巻十五・甘蕉(国立中國醫藥研究所出版)

 

『本草綱目』(金陵本)第12冊(第15巻)より抜粋

●国立国会図書館デジタルコレクション『本草綱目』(金陵本)第12冊(第15巻)より

 

 

【原文】甘蕉
〔氣味〕甘。大寒。無毒。〔主治〕生食。止渇潤肺。蒸熟裂。舂取仁食。通血脈。填骨髓。生食破血。合金瘡。酒毒。乾者。觧〔月幾〕熱煩渇。除小兒客熱。壓丹石毒。

 

【校勘(校閲)】
蒸熟晒裂:同じ『本草綱目』でも国立中國醫藥研究所出版の方では「蒸熟曬裂」と記し、「晒」字が「曬」字になっている。意味は同じなので問題なし。
・觧:「觧」は「解」字の異体字。
〔月+幾〕一字:国立中國醫藥研究所出版の方は〔月幾〕を「肌」と記す。

【解説】

 〔氣味〕は味や性質のことで、甘蕉(バナナ)は甘味で、その身体への作用は大寒無毒であるとされています。現代人でも感覚的に理解しやすいのは、夏野菜には体を冷やすもの、冬野菜には体を温めるものが多いことです。夏野菜は、酷暑で熱がこもった体を冷やして潤す作用のあるものが多いわけですね。季節だけでなく、南方のフルーツはやはり体を冷やす性質を持っているものが多い傾向があります。バナナはその分かりやすい例になります。「大寒」なので食べ過ぎは要注意ですが、ヒドイ便秘の方でコロコロうんちの場合はバナナはオススメです。腸内の熱をとり、潤してくれるので便秘の改善が期待できます。

 

 「生食破血」とはおそらく過食はよくないという程度に受け取ればいいのだと思います。「解酒毒」はお酒の毒を解毒するということですが、お酒の性質は「大熱」なのでバナナの「大寒」で調和させるのですね。

 

 一方で乾燥バナナのことも触れています。次の文がそうですが「乾者。解肌熱煩渇。除小兒客熱。」とあり、皮膚の熱や(喉の)渇きを改善したり、小児の体内にこもった熱を取り除くのに役立つとしています。『本草綱目』は四百年以上前の書籍なので、その頃の人たちも生バナナだけでなく乾燥バナナも食べていたのですね。

 

 

蕉油(バナナの皮の油)
 余談になりますが、黄色の囲い線は「甘蕉(バナナ)」についての記述ですが、その隣の緑線は「蕉油」について解説されています。

【原文】蕉油〔以竹筒挿入皮中取出瓶盛之〕
〔氣味〕甘。冷。無毒。〔主治〕頭風熱。止煩渇。及湯火傷。梳頭止女人髮落令長而黑。暗風癇病。涎作運悶欲倒者飮之取吐。極有奇効。

【解説】
 蕉油は「竹筒にて皮中に挿入して取り出して瓶に盛る以竹筒挿入皮中取出瓶盛之)」と言っています。バナナの皮から油を取るなんて発想がなかったのでビックリです。
 蕉油(バナナの皮の油)は、皮膚や髪に塗って使うのが基本のようです。先ずは「頭風熱」「やけど(湯火傷)」とあるので頭の熱感や皮膚のやけどを癒すとしています。あとは「頭を梳(す)きて女人の髪落つるを止め、長じて黒くせしむ。梳頭止女人髮落令長而黑)」というので、よくココナッツオイルで髪をケアするのと同様にするのだと思います。


 以上、現代栄養学的にも東洋医学的にもバナナはオススメです!健康長寿によいのですが、短期的に大量に摂るのはNGです。やはり長期的に毎日少しずつ摂取するのがオススメです。

 

 

 

参考文献

『本草綱目』(国立中國醫藥研究所出版、中華民国77年10月三版)

・『本草綱目』(金陵本) - 国立国会図書館デジタルコレクション

・『證類本草』(『欽定四庫全書』所収『證類本草』