冷え症とは
「冷え症」と一言でいってもいろんなタイプがあります。例えば、全身で冷えを感じるタイプ、手も足も冷えるタイプ、手は温かくて足だけ冷えるタイプ、足が冷えて顔がのぼせるタイプなどなど。
冷え症の原因
おもな原因のひとつは、体内の「熱産生」が足りない状態だからです。人の体温の調節は、「熱産生」と「熱放散」のバランスを上手に保つことで行われますが、そのうちの「熱産生」が足りないと冷え症の原因になってしまいます。
「熱産生」が足りないのが全身タイプの冷え症のおもな原因ですが、熱は血液によって運ばれますので、「熱の運搬」がうまくいかないと四肢末端タイプの冷え症になりますし、自律神経のバランスが崩れて「熱の調節」がうまくいかないことで体感異常タイプの冷え症になることもあります。
ここまで紹介したように冷え症にもいろいろなタイプがあります。冷え症のタイプ別で原因も違ってきます。
冷え症もいろいろ。どのタイプでしょう?
冷え症をタイプ別に紹介します。当てはまるもののがあるかチェックしてみてください。
全身で冷えを感じる「全身冷え症」タイプ
「全身冷え症」タイプは前述したように「熱産生」がうまくできていないことが多く、痩せ型で筋肉が細い人が多いです。「熱産生」と「熱放散」のバランスが崩れてしまっている状態にあることが考えられます。筋肉量を増やすことが一番の近道ですので、有酸素運動のウォーキングやスクワット運動がおススメです。
手も足も冷える「四肢末端冷え症」タイプ
手先・足先まで血液が行き届いていない状態です。有酸素運動のウォーキングやストレッチ体操などを取り入れると冷え症改善の効果が出やすいです。
足が冷えて顔がのぼせる「冷えのぼせ」タイプ
東洋医学でよくいう「上実下虚(上熱下寒)」の状態が「下半身冷え症」タイプになります。俗に言う“冷えのぼせ”です。
例えば、酷暑の夏に部屋を涼しくするためにエアコンを使いますが、その時にサーキュレーターを併用すると部屋の床面(下)と天井(上)の温度差を少なくすることができます。併用しない場合は、床面に冷たい空気、天井に温かい空気が偏在してしまいます。「冷えのぼせ」タイプはちょうどそんな状態です。
原因は下半身の衰えや自律神経のアンバランスなどが考えられます。一番のおススメは、筋トレです。スクワット運動のような下半身を鍛えるための筋トレができれば理想的です。でも筋トレはちょっとハードルが高い、、、という人には、血管をしなやかにするための有酸素運動のウォーキングやストレッチ体操などがおススメです。
他にも自律神経を整えるために呼吸法やマインドフルネス瞑想などもおススメです。コツさえつかめば呼吸法はどこでもできます。1日5分の呼吸法を実践するだけでも自律神経を整えるのには役立ちます。
手は温かく足だけ冷える「下半身だけ冷え症」タイプ
上記の「冷えのぼせ」タイプより比較的軽症なのが「下半身だけ冷え症」タイプになります。両タイプとも下半身の冷えは共通していますが、のぼせの有無の違いです。
「下半身だけ冷え症」タイプも一番のおススメは、筋トレですが、軽度の冷え症のケースが多いのでウォーキングでも十分に改善できることが多いと思います。
●仙腸関節のトラブルから冷え症や腰痛になることも
他にも仙腸関節からくる冷え症も考えられますので、ゴムボールなどを使って仙腸関節を圧迫する方法もお手軽に実践できるのでおススメです。
手足は温かいけど「内臓冷え症」タイプ
「内臓冷え症」タイプは胃腸が弱く、手足は温かいパターンが多いイメージです。体温は「内臓」優先にすべきなので、手足冷&内臓温にするのが本来あるべき姿なのにその調整もうまくできず、手足温&内臓冷の状態になってしまっています。
自律神経の機能低下によって、交感神経と副交感神経のスイッチの切り替えがうまくいかないと「内臓冷え症」が引き起こされるのだと思います。
身体に冷えがないのに寒く感じる「体感異常」タイプ
本人はとにかく寒さに敏感で厚着します。他の家族は暑がる環境でもひとりだけ寒がって厚着するケースは「体感異常」タイプを疑います。過度な厚着のせいで逆に汗が出て、汗したことで体も冷えてしまうという悪循環になります。
首・肩・背中まわりを中心とした上半身の筋肉の硬直や下半身の衰え・自律神経失調症などの原因が考えられます。首・肩まわりの筋肉の過緊張が自律神経のバランスを狂わせることも考えられますので、ストレッチ体操や呼吸法の実践で自律神経を整えることをおススメします。
筋肉を使ってじょうずに熱産生を
熱産生の主な発生源は「筋肉」になります。運動して筋肉が使われると体熱が起こります。長く歩いたり、走ったり、ダンスしたりすると体が熱くなりますね。これらは筋肉を使ったことで体熱が起こったからです。
他にも、食事をするだけでも熱産生が起こります。食事をすることで体が温かくなるのは実感があると思いますが、食事誘発性熱産生(DIT)といい、摂取エネルギーの約10%程が使われて体熱になります。
冷え症と基礎代謝
基礎代謝は、私たちが生命を維持するために最低限必要なエネルギーのことをいいます。例えば、休日だからと一日中だらだら家に居たとしても心臓・肝臓・腎臓・肺などの内臓は働いていますし、体温調節のためにもエネルギーが消費されます。生きていく上で必要最小限のエネルギー
=「基礎代謝」が低い体質の人は「熱産生」も低くなりがちになり、冷え症になりやすくなります。
筋肉量が多いほど基礎代謝量が高い
1日のエネルギー消費量の約60%を基礎代謝量が占めています。筋肉量が多いほど基礎代謝量も高くなることがわかっています。ということは、筋肉量を増やすことができれば基礎代謝も上がり、基礎代謝が上がれば「熱産生」も効率的になり、冷え症の改善にもつながります。
もっと言えば、筋肉をつけて基礎代謝が上がれば、安静にしていても消費エネルギーが増えるので、太りにくい体質になり、肥満予防にもなります。つまり効率良くダイエットしたいなら筋肉をつけることが近道なのです。
逆に、運動不足や加齢などで筋肉が衰えると基礎代謝はもちろん食事誘発性熱産生(DIT)も低下しますので太りやすい体質になります。そして冷え症にもなりやすくなります。
下半身が全身の筋肉の70%を占める
効率的に筋肉を使って代謝を上げるには、大きな筋肉(大筋群)を意識することが大切になります。大筋群とは、大臀筋・大腿四頭筋・ハムストリング・広背筋・大胸筋などの大きな筋肉のことをいいます。
全身の筋肉の70%を下半身が占めており、大臀筋(おしり)・大腿四頭筋(太もも)・ハムストリング(太もも裏)だけで全身の筋肉の50%を占めています。正しい姿勢でスクワットを行うことができれば、かなり効率的に筋肉を鍛えることになり、代謝も上がり、冷え症対策にもつながります。
冷え症の鍼灸治療
上記のように冷え症はタイプ別で原因や対処法も違います。タイプごとに最善のツボを選び、お灸をしたり、針したりします。また、ご自宅で自分でできる冷え症の改善法(お灸・仙腸関節・ストレッチ体操・スクワット運動など)もお教えします。
冷え症の重症度には個人差がありますので一概には言えませんが、だいたい3カ月以内での冷え症の改善を目指します。
参考文献
・『動作でわかる筋肉の基本としくみ』(山口典孝・左明〔著〕、石井直方〔監修〕)
・『体幹力を上げるコアトレーニング』(木場克己)