パニック障害の鍼灸治療


パニック障害

パニック障害とは

 

 不安障害のひとつであるパニック障害は、以下のような三大症状を特徴としています。

 

① パニック発作

 

 突然何の前ぶれもなく動悸・めまい・呼吸困難・冷や汗・吐き気・手の震えなどの「パニック発作」が起こります。基本的には、予兆を感じることなく、いつも突発的に症状に襲われることを何度も繰り返します。パニック発作時には声を出すこともままならない状態になります。

② 予期不安

 

 「予期不安」と言いますが、やがて「次はいつパニック発作に襲われるのか」という不安感でいっぱいになります。症状よりも不安が先行することでさらに症状を引き起こすという負のスパイラルに陥り、パニック発作が起こりやすくなります。

③ 広場恐怖

 

 「広場恐怖」という言葉づかいが少し分かりにくくさせて誤解されやすいワードになっている気がしますが、パニック発作が起きた時に、その場所や状況からすぐに逃げ出したいのに避難できないのではないかと過剰な不安感や恐怖感でいっぱいになります。その結果、不安感が増してしまうような広場や閉ざされた空間を避けるようになります。他にも、人混みがダメになり、時間を要する歯医者や美容院なども困難になります。公共交通機関の利用を避けたり、遠出を控えたりして日常生活にも支障が出てしまいます。

 

      パニック障害・予期不安・広場恐怖の図解  


パニック障害の原因は

 

 今のところ十分な原因の解明には至っていないのが現状です。
 有力な説としては、ストレスによる「脳の誤作動」が原因として考えられています。脳内の神経伝達物質ノルアドレナリンの量が過剰になることで、動悸・めまい・呼吸困難などのパニック発作を起こすと考えられます。

 

 
パニック障害を公表している芸能人

長嶋一茂さん

 

 TV番組でもパニック障害を公表し、電車を乗るにも特急や快速などは不安感が増すので各駅停車しか乗ることができなかったなどご自身の体験を語っています。また著書もあるので興味のある方は『乗るのが怖い 私のパニック障害克服法(幻冬舎新書)』をご参照ください。

中川家・剛さん

 

 TV番組の中で、電車で仕事の現場に行くのも一苦労だったことや弟・礼二さんが献身的に連れ添って仕事することができたことが症状の改善に大いにプラスになったようです。

 

 急行や特急に乗ると不安感が大きくなって発作が出てしまうので、すぐに電車を降りることができる各駅停車を利用し、何度も乗り降りしながら、本来30分で行くことができる大阪-京都間を4時間もかけて仕事に行ったのだそうです。剛さん一人だけなら難しかったかもしれませんが、弟・礼二さんと一緒だったからこそ段階的な曝露療法を実践できたのだろうと思います。


キンプリ岩橋玄樹さん

 

 2018年10月、ジャニーズ事務所のKing&Princeのメンバー、岩橋玄樹さんがパニック障害を公表し、治療に専念するため活動休止することを発表しました。
 

 

 発症率は人口の1~3%とも言われており、決して珍しい病気ではないことが分かります。若年層に多く発症し、受験生や新社会人など強いストレスにさらされることが発症のきっかけになることも多いようです。

 

 パニック障害になりやすい性格があるのかどうかまだ解明されてはいませんが、内向的であったり、几帳面、生真面目、完璧主義などの性格傾向にある人に発症しやすいとも言われます。周囲の理解がとても大切になってきます。特に、ご家族の理解が得られるかどうかは予後を左右すると感じます。当然、ご家族の温かい支えがある方が治療にはプラスに働きます。


パニック障害の鍼灸治療

 

 パニック障害に対する鍼灸治療の有効性はまだまだ認知されていないように感じます。前述したように、パニック障害は「脳の誤作動」が原因として考えられています。症状の強弱の違いはありますが、自律神経失調症から来る不定愁訴ともよく似ています。自律神経失調症が鍼灸治療で改善することは少しずつ知られるようになってきていると感じます。パニック障害についても鍼灸治療が選択肢のひとつとして認知されるように、という想いがあります。


 どんな病気にも言えることですが、パニック障害の苦しみは体験した患者さんにしか分からない世界なのだと感じます。うつ病や自律神経失調症、更年期障害などもそうですが、生活に支障がでてしまうと人生も変わってしまう。もしかしたらライフスタイルも変更せざるをえない。今までの生活が激変してしまいます。


 パニック障害が「脳の誤作動」で起こるらしいことが解明されつつあるのですが、それでは、なぜ「脳の誤作動」が起こるのかについては、強いストレスや睡眠不足なども数ある原因のひとつとして考えられます。その結果として「首こり」が強く出てしまうことで脳の誤作動が起こる一因になるのではないかとも言われます。

 

 治療経験から導き出した経験則ではありますが、中枢神経系は脳と脊髄から成っていますので、パニック障害=脳の誤作動(仮説)に対して、脊椎まわりのツボ(経穴)を刺激してあげることは効果的に働きかけることができるのではないかと感じています。首=頚椎まわりの頑固な「首こり」を根気強くやわらげることでパニック障害の改善が期待できます。もちろん100%効果が出るわけではありませんが。


 パニック障害の鍼灸治療に興味を持たれて、なんとか改善したい患者さんのお役に立てればと思っております。

 

 

 

パニック障害 参考文献

 

『パニック障害は治る』 渡部芳徳

・『乗るのが怖い 私のパニック障害克服法』 長嶋一茂