自律神経失調症の鍼灸治療


自律神経失調症

 

自律神経失調症 自律神経とは何か?

 

 自律神経は、交感神経と副交感神経がうまくバランスをとることで成り立っています。交感神経とは活動モードの時に働く神経であり、副交感神経はお休みモードの時に働く神経です。よくシーソーのような関係だと例えられることがあります。

 

 

自律神経失調症 自律神経失調症

 

 自律神経(=交感神経と副交感神経)のバランスが崩れてしまったのが「自律神経失調症」です。最近は、スポーツジムに行くと自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスを測定する機器が利用できる施設もあるようです。自律神経の他にも疲労を測定し数値化する機器もありますし、それらを上手に活用すれば病気の予防にも役立てることができます。

 


自律神経失調症 自律神経失調症の具体的な症状

 

 身体的症状:慢性疲労、全身のだるさ、動悸、ほてり、睡眠障害、耳鳴り、めまい、頭痛、喉の不快感、便秘、下痢など

 精神的症状:イライラ、不安感、憂鬱感、やる気の喪失、すぐ落ち込む 等々

 

 これらの症状が少なめに出る人と多く出てしまう人と個人差がかなりありますが、うつ病の患者さんと重複している症状が多いことに気づきます。不眠・やる気が出ない・気分の落ち込み …… 等の症状を訴えると うつ病 と診断されてしまう可能性が高いと思います。

 

 医師の診断というのは往々にして科学的・客観的な診察ばかりが行われているわけではなく、医師の主観で診断が下されることも多いようです。それらについては、米山公啓氏の『医学は科学ではない』(ちくま新書)などが参考になるでしょう。

 

 うつ病のチェック表などもありますし、光トポグラフィー検査などは脳の血流のパターンから「うつ病の可視化」を可能にしました。光トポグラフィー検査によって、うつ病・統合失調症・双極性障害を判別できるとされています。精度はどれほどなのかは分かりませんが。。。年々精度は良くなるでしょうし、とにかく画期的です!

 


自律神経失調症 東洋医学の陰陽論もバランスを重要視!

 

    自律神経失調症

 

 東洋医学の観点から自律神経を捉える時にとても便利な概念として「陰陽論」があります。例えば、「静は陰、動は陽」、「内側は陰、外側は陽」、「下は陰、上は陽」、「右は陰、左は陽」、「五臓は陰、六腑は陽」という感じです。五臓六腑だと「五臓は陰」なのですが、五臓(肝・心・脾・肺・腎)をさらに陰陽で分けると「腎は(陰の中の)陰、心は(陰の中の)陽」となります。陰陽論は、相対的なものであって、絶対的なものではないのです。

 

 東洋医学の陰陽論は、自律神経(交感神経と副交感神経)と同じで陰と陽のバランスが大切です。例えば「自然界の一日」を陰陽論で捉えると、昼間は陽気が盛ん、夜間は陰気が盛んとなります。また「四季」を陰陽論で捉えると、春夏は陽気が盛ん、秋冬は陰気が盛んとなります。陰だけでも陽だけでもダメで流動的ながらもバランスがとれているのが自然であり、人間の身体もそうなのだという考え方ですね。東洋思想の天人相関説(てんじんそうかんせつ)が参考になります。だいたいの陰陽論のイメージを理解していただけたかと思います。

 


自律神経失調症 鍼灸医学は「氣の医学」

 

 もうひとつ東洋医学には「」の概念があります。「氣」はエネルギーと訳されることが多いですが、大正解ではなくても間違いではないです。「」の実体はまだ科学的に観測されてはいませんが、「」を定義すると「目には見えないけども働きのあるモノや現象」となります。分かりやすい例は、風です。風は強く吹けば物を動かし、何らかの作用があります。「」は日本語にも多用されます。空気、熱気、湿気、磁気、語気、景気、気品などなど。日本人には馴染み深すぎて日常ではあまり意識しないと思います。

 

 ともかく身体を流れている目には見えないエネルギーのことを古代中国人は「」と呼んだわけです。そして身体を巡る「」こそが生命の本質的なモノであると捉えていたのです。そこから「氣の医学」としての鍼灸医学が生まれました。

 

 氣の概念で自律神経失調症を捉えると「氣虚」と表現されます。とは「虚実」の「虚」で、不足という意味です。氣虚=エネルギー不足。とにかく改善したいなら「虚(不足)を補う」のが鉄則です。反対に「実(過度に充実)ならば瀉す(排除する)」のですが、現代人は圧倒的に「虚」の身体症状が多いですね。慢性的なストレスや睡眠不足(睡眠負債)などがあればなおさら「虚」になって当然です。

 

 自律神経失調症の鍼灸治療は自律神経のバランスを上手に整えることが大切になります。現代人は過度なストレスを抱えて、過緊張の傾向にありますので交感神経が働き過ぎてしまっている人ばかりです。いかにリラックスして副交感神経を優位にするように調整できるかが治療のポイントになります。

 

 

 

ストレートネック 参考文献

 

・『慢性疲労は首で治せる!』 松井孝

・『気流れる身体』石田秀実
・『中国医学思想史 もう一つの医学』石田秀実
・『死のレッスン』石田秀実