機能性ディスペプシアをお灸でセルフケア


 

機能性ディスペプシアとは

 胃痛・胃もたれ・みぞおち痛・胸焼けなどの症状がでているにも関わらず内視鏡検査をしても異常が見つからないケースでは「機能性ディスペプシア(FD:Functional Dyspepsia)」かもしれません。

 「ディスペプシア(dyspepsia)」は“消化不良”の意味になります。「機能性ディスペプシア」とは簡単に言えば、検査では問題無いけど自覚症状は有る、ということになります。

 機能性ディスペプシアの患者さんが医療機関を受診しても検査上は問題が見つからないのでなかなか有効な治療をしづらいのが現状です。投薬治療してみて症状が治まればよいのですが、服薬しても好転しない場合は自宅でお灸によるセルフケアをしてみてはいかがでしょうか。


機能性ディスペプシアのセルフ灸

 使用するお灸は、筒型のお灸がおすすめです。筒型お灸は、ドラッグストアでも販売していますし、ネット通販でも購入することができます。お灸の熱さも、スタンダード・ソフト・ハードなど選べます。

 鍼灸の古典を見ると「以痛為輸(痛をもって輸となす)」という言葉があります。ツボを押してみて「痛(圧痛)」のある所が「輸(ツボ・経穴)」であり、治療のポイントにもなる、というような意味だと解釈できます。

 押してみて痛い所が治療のポイントになるというのはシンプルですが、とても重要な指摘です。実際の治療にもかなり使えます。わかりやすいですし、よく効きます。「ツボ=治療点」の探しやすさは個人差があるかもしれません。それでもぜひ自分の感覚を信じて試してみてください。少しくらいズレていても針とは違い、お灸は効いてくれると思います。


仰向け(または座位)で行うお灸 ― 中脘・肓兪・関元・水分

 

 

 まずは仰向けになります。そして人差し指・中指・薬指の三指をそろえて優しくお腹を押さえてみます。図解のイラストの中にある中脘・肓兪・関元・水分などのツボ(経穴)は違和感や圧痛の好発部位になります。前述した中脘・肓兪・関元・水分などのツボはあくまでも好発部位です。もちろん個人差があります。やはりお腹全体を探るのを基本にしてください。


体育座りで行うお灸 ― 足三里

 

 足三里も有名なツボです。床に座り、足を伸ばした姿勢でもいいですが、体育座りしてお灸した方がやりやすい気がします。これも個人差があるでしょう。


とにかくオススメのツボ ― 合谷

 

 オススメするのは「押してみて圧痛がある場合」のみです。合谷のツボは押しても全然痛くない時もあれば、激痛の時もあります。基本的に押して反応があるツボはよく効きますが、逆に押しても反応がないツボは針や灸で刺激してもあまり効果が期待できません。


セルフ灸を実践している患者さんの実例

 患者さんの中にはたま~にですがセルフ灸に見事にはまって毎日のようにお灸を実践している人もいます。ツボの名前も覚えてしまい、ツボの名前(経穴名)をたくさん言えるようになるだけでなく、気の流れである“経脈”の名前なんかも知っているマニアックな患者さんもいます。ある患者さん(以下“Cさん”と表記)の実例を紹介します。

 Cさんはお灸が大変気に入り、ほぼ毎日自宅でセルフ灸をしていました。なんとなくお腹の違和感がずっとあったので自分でも積極的にお灸を実践していたらお腹の不調もすっかり改善してしまいました。

 Cさんが胃腸&体調改善のために使ったツボは、中脘・肓兪・関元・合谷でした。Cさんはとてもカンが良くてツボ探しのセンスがある人なのでセルフ灸の治療効果も高かったのだと思います。

 興味を持っていただいたらぜひ一度実践してみてください。普段は自分の体について感じることは少ないように思います。意外なところが痛かったり、気持ち良かったりします。お灸する前はあんなに痛かったのにお灸後にほとんど痛みが消えるとビックリします。ぜひお灸体験してみてください。